COPD 慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?
COPDは、別名「タバコ病」とも呼ばれています。患者の約90%に喫煙歴があり、たくさんタバコを吸う方ほど発症しやすい疾患です。長期間の喫煙習慣が主な原因であることから「肺の生活習慣病」ともいわれ、肺に炎症がおこり、息が吐き出しにくくなる病気です。
タバコを吸い続ければ吸い続けるほど、COPDは進行していきます。しかしながら、進行がゆっくりしているため、患者自身、「息が切れるのは年のせい」と思って必要以上に動かないようにしていたり、「咳や痰はタバコのせい」とそのライフスタイルに自身の症状・障害をあわせてしまうため、COPDの症状を自覚して来院したときには、かなり進行している場合が多いとされています。
そのため日本では、40歳以上の8.6%(約530万人)、70歳以上の6人に1人がCOPDといわれていますが、実際に治療をしているのは、その1割もいません。日常生活に支障をきたす前に何よりも早く見つけて治療することが大切とされています。

日本におけるCOPD死亡者数
厚生労働省の統計によると2022年のCOPDによる死亡者数は16,676人でした。
これまで、男性の喫煙率が高かったため死亡者数も男性の方が多いですが、女性の方がCOPD発症リスクが高いという報告も発表されています。
参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
日本におけるCOPD死亡者数(1998-2022年)

(出典:厚生労働省 人口動態統計)
一般社団法人GOLD日本委員会『日本におけるcopd死亡者数』より引用
COPDの原因
COPDは有害物質の吸入や大気汚染によって起こります。中でも原因のトップにあげられるのはたばこの煙です。長い間たばこを吸うことによって、肺が炎症を起こし、痰や咳が多くなります。その結果、気道という空気の通り道が狭くなり、空気の流れが悪くなります。
有害物質が肺胞にまで及んで炎症を起こすと、肺胞の壁が破壊され、古くなったゴム風船のように弾力がなくなり空気をうまく吐き出せなくなります。このように、呼吸器の機能が低下し病気が進めば慢性気管支炎や肺気腫になりますが、これらをまとめてCOPDといいます。そしてこれらがもととなり、肺の空気がうまく吐き出せなくなり、その結果酸素不足を起こし、息切れを起こす病気です。
●慢性気管支炎
空気の通り道である軌道が狭くなり、呼吸がしにくくなる。せき・たんの症状が長く続く。
●肺気腫
気管支の先にぶどうの房のような肺胞があり、炎症が進むと肺胞が壊れ、呼吸が苦しくなる。

COPDの肺の様子

COPDの症状
●主たる症状
・労作性の呼吸困難(動いたときの呼吸困難)
・慢性の咳(ずっと続く咳)
・慢性の喀痰(ずっと出る痰)
●COPDへの経過
●その他の症状
・体重減少 ・食欲不振 ・活動の制限 ・不安、抑うつ

COPDと相互に影響しあう病気
COPDは、肺の病気ですが、肺だけでなく全身にさまざまな病気を引き起こす可能性があります。また、同じ量のたばこを吸っていても、COPDの人はそうでない人に比べ、約10 倍肺がんになりやすいといわれています。COPDの治療が不十分だと他の病気も悪化しやすく、他の病気の治療が不十分だと、COPDの管理が難しくなります。
COPDは進行する前に発見し、他の病気のコントロールもしっかりすることが大切です。そのため、早期発見・早期治療を行い、肺だけでなく全身を診て管理していくことが重要となります。
COPDは全身の病気
COPDの進行段階
最初は自覚症状がほとんどないのですが、長年の喫煙により上り坂や階段などで息切れしてきたり、さらに進行すると着替えなど軽い日常動作でも息苦しくなってきます。けれども、加齢のせいかな?と思ったり、息苦しいので運動を避けることにより、症状を見逃すケースが多くなります。

COPDの診断基準
COPD患者さんは気道が狭くなり息が吐き出せないことが特徴です。そこで、医療機関でスパイロメータという器具やモストグラフという機械を使って肺がうまく働いているかを調べます。他にも病状の問診や、体の診察、胸のレントゲン撮影、血液検査などをおこない、肺の状態を詳しく調べ、その他の長引く咳で症状を起こす病気を除外したうえで診断します。
画像診断
画像検査は、COPDの診断だけではなく、「間質性肺炎」や「気管支拡張症」など、似た疾患の可能性を除外したり、「肺がん」の有無を確かめたりするのに有用です。
●胸部X線写真
健康な人と比べて、肺が黒っぽくなり、上下方向に肺が引き伸ばされた状態がみられます。
その結果「心臓が細長く写る」⬅︎などの特徴がみられるようになります。これによりCOPDが確認できます。
●胸部CT
高解像力を有するヘリカルCT(コンピュータ断層撮影)の画像で見ると、COPDの肺は、肺気腫が進んで肺組織が壊れたため黒い部分⬅︎が広がって見えます。
COPDで肺胞が壊れて弾力性を失うと、スポンジのようになってしまいます。気管支に炎症を起こすと気管支も狭くなるため、うまく息が吐き出せなくなり、肺機能の低下を起こします。残念ながら、一度破壊され、変化を起こした肺を元に戻すことはできません。
肺年齢と肺の老化度
肺の健康状態を知るめやすとして、肺年齢があります。当院では肺機能検査で、この肺年齢を図ることが出来ます。同年代と比較して実年齢より高いか低いかで、肺の老化度がわかります。COPDの疑いがある場合は、実年齢以上の肺年齢になります。
COPD自覚症状チェック
□ 現在タバコを吸っている、または吸っていた
□ 10年以上喫煙している
□ 40歳以上である
□ 咳・たんが数ヶ月つづいている
□ 階段、坂道を上がると息が切れる
□ 同年代の人と同じペースで歩けない
□ 散歩するときは途中で一体みしないとしんどい
COPDの治療の目指すところ
COPDは徐々に進行し、放っておくと呼吸の状態は元には戻りません。病気が進行してしまうと、気づいたときには、かなり重症となり、日常生活に支障をきたしてしまうようなことも少なくありません。
早く病気を発見して治療を続ければ、症状を和らげたり、病気の進行を抑制することが可能となります。
早期発見・早期治療により、長期的に疾病を管理していくことが重要です。
COPDの管理目標
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- 症状と生活の質(QOL)を改善する。
- 運動能力や身体能力を向上させる、または維持する。
- 増悪を予防する。
- 疾患の進行を抑制する。
- 全身併存症や肺合併症を予防する。
- 寿命を延長する。
セルフマネジメント7つの要素
COPDと上手に付き合っていくためには、日頃のセルフマネジメントが重要です。ポイントは以下の7つ。
増悪を予防するための日常生活の工夫についてみていきましょう。

①セルフマネジメント 病気の理解
COPDの治療は長期にわたります。納得して治療を受けるためにも、患者さん自身が自分の病気についてよく理解しておくことが欠かせません。医師や家族に任せっきりにせずに、自分から前向きに病気に向き合いましょう。
早く病気を発見して治療を続ければ、症状を和らげたり、病気の進行を抑制することが可能となります。
②セルフマネジメント 禁煙
COPDになる最大の原因は喫煙です。すでにCOPDになっていても煙草をやめれば、その後の 肺機能の低下はタバコを吸わない人とほぼ同じになるとされています。 禁煙はCOPDに治療では最も重要で完全な禁煙が必要です。
(当院 禁煙)
③セルフマネジメント 薬物療法
治療の中心は、全身的な副作用が起こりにくい吸入薬をよく使います。この薬を使い気道を広げると空気の通りがよくなり、呼吸困難を軽減します。吸入薬を正しく使うことで、健康な人と変わらない日常生活を送ることができることを目標としています。吸入薬は誤った方法で使用すると効果が下がるため、医師の指導のもと正しく使用しましょう。(詳しくは 独立行政法人 環境保全機構「主な吸入薬と吸入器」をご覧くださいhttps://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/about/09.html)
(当院では吸入指導を通して、患者さんが吸入薬を正しく使用できるよう指導しております)
④セルフマネジメント 運動療法
息切れがすると体を動かすのがおっくうになりますが、体を動かさないと筋肉が弱ってさらに動かなくなり、結果としていっそう息切れが強くなるという悪循環に陥りがちです。ムリのない範囲で体を動かして体力をつけ、悪循環を改善することが大切です。
歩くことは安全で効果的な運動ですが、体を動かすことは運動に限ったことではありません。家事などで体を動かして日常生活を活動的におこなうことも息切れの改善につながり、体調を改善します。日常生活の中で積極的に体を動かすようにしましょう。
⑤セルフマネジメント 栄養療法
COPDは呼吸をするだけでもたくさんのエネルギーを消費する病気です。患者さんは健康な人よりも多くのエネルギーが必要ですが、食欲の低下などにより、栄養不足になりがちですので、しっかり栄養管理をおこなうことが大切です。
軽症の患者さんの中には肥満気味の人もみられますが、やせの人が多くみられます。どちらの場合も適切な体重にもどし、維持することが必要です。そのために、体重測定と、毎日の食事の内容を整えることが重要となります。重症になると、呼吸にエネルギーを使うようになり、また、息切れや体を動かさないので食欲がわかないなどの理由でやせていく傾向があります。
このようにやせが進行していくと息切れが強くなり、生活の質が低下し、命に関わることもあります。
COPDの悪循環
COPDの患者さんは、息苦しさなどで食欲が低下し痩せてしまうと呼吸筋や足の筋力などが低下します。筋力が低下すると動くだけで息切れやだるさが増加し、体を動かしたくなくなります。そのため活動量が低下して家に閉じこもり気味になり、さらに食欲が低下します。
このように食欲がへる→痩せる→息切れする→動かなくなる→食欲がへるという悪循環で病状がさらに悪化していきます。
そのため、1日3食、栄養バランスの良い食事と体を動かしていくことが大切となります。
⑥セルフマネジメント 在宅酸素療法
COPDでは、肺のガス交換の働きが著しく低下し、血液中の酸素が不足した状態(呼吸不全)になることがあります。その不足した分を補うため、酸素を吸入するのが酸素療法です。酸素療法をおこなうと全身に酸素が行き渡り、心臓をはじめとしたさまざまな臓器の負担が軽減され、酸素療法をおこなわない場合より長生きができることがわかっています。また、生活の質や運動能力の改善、増悪による入院を減らすなどの効果も期待されます。
⑦セルフマネジメント 憎悪の予防
風邪やインフルエンザなどの呼吸器の感染症をきっかけに、呼吸困難などの症状が悪化して、いつもの治療で改善せず、治療内容を変更する必要がある状態をCOPD の「増悪」といいます。
増悪がおこると、肺機能は安定期より低下し、息切れが悪化し、咳や痰の増加がみられます。その他、発熱や頻脈、倦怠感・疲労感、不眠などの症状を伴うこともあります。生活の質(QOL)がより下がり、より命にかかわることがあります。 COPDは増悪のたびに段階的に悪化することが知られています。このような事態を避けるためには、「増悪を繰り返さない」、「増悪が起きたら早めに対応する」ことが重要です。痰の色や量が増加した場合は、早めに受診しましょう。
日常生活で気をつけること
- 規則正しい生活をする。
- 風邪を引かない。
- 飲酒を控える。
- タバコを吸わない。
- 予防接種を受ける。
(インフルエンザ・新型コロナ・肺炎球菌ワクチンなど)

治療の目標
たとえ症状がなくなっても、お薬・治療を継続して上手にコントロールしながら快適な生活を長く送りましょう。
独立行政法人 環境再生保全機構
『喘息・COPD電話相談室公式サイト』 https://www.erca.go.jp/yobou/copd/ より抜粋・引用していおります。

